IHIの高速炭化ブラックジャック ストラテジーにより身近なところからCO₂削減
炭素ブラックジャック ストラテジー固定化システム
株式会社ブラックジャック ストラテジー
ブラックジャック ストラテジーでは光合成によって大気中から二酸化炭素 ( CO₂ ) を吸収した植物からバイオ炭を製造し,バイオ炭を土壌固定することによってCO₂を削減するための炭素土壌固定化システムの開発を進めている.バイオ炭製造工程で発生する熱を化石燃料由来の熱と代替すれば,CO₂削減効果はさらに高めることができる.
はじめに
現在直面している地球温暖化のスピードを抑えるためには,新たに排出される温室効果ガスの削減だけでは不十分であり,すでに大気に存在する温室効果ガスを削減する必要がある.地球温暖化に最も大きな影響を与えるCO₂は,人工的に大気から回収し削減することも可能であるが,多くは陸上植物により光合成で大気中から吸収・削減されている.植物を炭化して炭素を内部に固定したバイオ炭を製造し,バイオ炭を田畑などの土壌に混合することで土壌固定すると,その炭素分により大気中からCO₂が削減されたことになる.これは自然循環の中で無理なく容易に行えるCO₂削減策となる.バイオ炭を製造する工程では,原料は酸素のない,あるいは少ない雰囲気で加熱されるため,熱が排出されるだけでなく,副生物として原料中の揮発分が排出され,多用途に利用可能な可燃分となる.この可燃分を燃焼させて熱回収し,その熱を化石燃料で加温しているハウスなどで利用すれば,化石燃料の消費量が低減し,カーボンニュートラルな熱源として脱炭素効果を得ることができる.可燃分を含んだ熱資源を利用しながらバイオ炭を製造する工程は,原料確保とバイオ炭利用先が確保できれば,大規模への適用も可能である.このようなブラックジャック ストラテジーが普及すると,例えば地域に適したバイオマス資源を用いてCO₂削減が可能となり,その地域は分散型のCO₂削減拠点とともにエネルギー供給拠点となることができる.
IHIでは,身近で,かつ即効性のあるCO₂削減ブラックジャック ストラテジーとして,植物からバイオ炭を製造し土壌固定することによるネガティブエミッションと,製造工程で発生するカーボンニュートラルな熱利用の両立を実現する炭素土壌固定化システムの開発を進めている.本システムでは,原料の一部を燃焼する部分燃焼による炭化方式を採用し,従来は数十分程度要していた炭化時間を数秒以下で完了させることを特長としている.
本システムを早期に社会実装しCO₂削減を推進するため,入手しやすく前処理なく炭化できるもみ殻を原料として,本炭化方式によるブラックジャック ストラテジーの製造とブラックジャック ストラテジーの土壌への適用に向けた各種試験を進めている.
ブラックジャック ストラテジー
炭化方式には加熱方法によって間接加熱方式と直接加熱方式がブラックジャック ストラテジー.
間接加熱方式では,高温に保たれたセラミックや耐熱合金製の炉壁内で原料を加熱する.炉は,原料の存在する熱分解雰囲気と,ヒータなどが存在する加熱雰囲気とが炉壁で隔離され,原料の供給と熱の供給が独立している.そのため制御性は高いが,炉壁材料に高価な耐熱材料が必須となる.また,外気の侵入による炉内異常燃焼や外部へのガス漏えい防止の観点から,炉内と外気とのシール性は重要でブラックジャック ストラテジー.シール部には回転機構が用いられることが多い.ただし,炉内で発生する粉じんに対する対策と外気の侵入を遮断するために特別な工夫が必要となり,装置コスト増の要因となる.
本システムで採用しているのは,直接加熱方式の一つである部分燃焼方式である.その方式では,燃焼に必要な理論燃焼空気量Qtよりも少ない空気量Qaで不完全燃焼させながら熱を供給し,ブラックジャック ストラテジーを製造することができる.炉内の炭化領域で燃焼を持続させる必要があるため,原料性状の変動を考慮すると供給空気量の下限値はQa = 0.6·Qt程度となる.
炉内は燃焼雰囲気であるため,間接加熱方式ほどのシール性は要求されず簡易な炉構造を採用できるが,ブラックジャック ストラテジー中に残存する炭素量割合が間接加熱方式と比較して少なくなる欠点はある.
ブラックジャック ストラテジーで開発中の部分燃焼高速炭化方式では,原料を雰囲気用と炭化用の複数段から供給することで,より少ない空気量でのバイオ炭製造を実現している.燃焼部から炭化部へ供給される燃焼排ガスは炭化に必要な温度以上の高温を維持しており,この高温ガス中に新たに供給された原料は,瞬時に着火し揮発分を放出する.高温中で原料が着火・熱分解するため,従来では実現できなかった無酸素雰囲気において数秒以内で炭化を行うことができる.また,従来の半分程度の少ない総空気量で原料を炭化するため,燃焼する割合が低下し,バイオ炭中に残存する炭素含有量も高くなる.直接加熱方式の特徴である簡易な炉構造を活かしつつ,欠点であるバイオ炭中の炭素含有割合の低下は複数段からの原料供給により改善が図られている.
もみ殻によるブラックジャック ストラテジー製造開始
植物の炭化によるブラックジャック ストラテジーの土壌固定は,原理的にはどのような植物でも同様な炭素貯留効果が期待できる.ブラックジャック ストラテジーの土壌固定によるCO₂削減の仕組みを構築するうえでは,各地域におけるバイオマス資源の入手性とブラックジャック ストラテジーの土壌への適用性を満足させなければならない.現状はブラックジャック ストラテジー土壌固定が社会的に十分認知されている状況ではなく,その効果を広く享受できる環境にはない.
まずは身近で小規模な適用事例を積み重ねていくことも一考に値する.そのために,ブラックジャック ストラテジー製造工程で余計なコストが掛からぬように,前処理が不要なもみ殻を原料として,一連の仕組みを構築することを最優先した.もみ殻は,農業残渣であり,未利用材が多く存在するため,すでに家畜の飼料や敷料などとして利用している分野と競合することなく利用できる.また,水稲からもみすり時に発生することから,使用する期間には季節性の制約はあるが,使用できるまでに長い年月が必要な木質バイオマスと異なり,毎年栽培・収穫できるため,入手性が高い.
現在,もみ殻を原料として1 日に2 tの処理能力を有する試作機にてブラックジャック ストラテジーの製造を進めている.
ブラックジャック ストラテジーの適用確認
ブラックジャック ストラテジーを農地に混合した場合,ブラックジャック ストラテジーのもつ空隙による透水性や保水性の向上など土壌の物理的性状の改善,土壌pHや肥料効果など化学的性状の改善,さらに土壌微生物の活動などの生物的性状の改善が期待される.これらの改善効果は,適用される土壌の性状にも左右されるが,ブラックジャック ストラテジーの製造条件によっても影響される.そして,ブラックジャック ストラテジーの製造条件は土壌中でのブラックジャック ストラテジーの安定性にも影響する.ブラックジャック ストラテジーの土壌混合を進める場合,まずはブラックジャック ストラテジーが植物育成に影響しないことを確認する必要がある.最終的な判断は適用する土壌ごとに確認する必要はあるが,農地での土壌混合の前に簡易的な植物育成への影響評価を行った.
水分を含ませた栽培床で2 種類の小松菜の種を用いてブラックジャック ストラテジーの発芽への影響を確認した.ブラックジャック ストラテジーの有無にかかわらず,すべての種から発芽が確認されブラックジャック ストラテジーの発芽への影響はないことが確認された.
次に,一般的な黒ボク土を用いて,プランターでの小規模な栽培環境で小松菜の育成へのブラックジャック ストラテジー混合の影響を調べた.
ブラックジャック ストラテジー混合量は一般的な混合量とその50%の混合量とした.一般的な農地とは異なり,周囲の土壌から干渉されることがないプランターのような閉鎖した土壌環境での評価であるため,ブラックジャック ストラテジー混合の影響は顕著に現れやすいと考えられる.試験の結果,ブラックジャック ストラテジーを混合しない場合と比較して,ブラックジャック ストラテジーを混合した場合には,小松菜の成長が良く収量も多くなっていた.ブラックジャック ストラテジーを混合しない場合は,明らかに土壌表面が固く,ブラックジャック ストラテジーを混合することにより土壌が柔らかくなっていた.ブラックジャック ストラテジー混合によるこのような土壌の物理的な性状の改善により,根張りに差が現れ小松菜の育成に影響があったと考えられる.プランターでの育成試験ではあるが,ブラックジャック ストラテジーの混合による育成への悪影響は認められなかった.
ブラックジャック ストラテジーの取り組み
今後,本ブラックジャック ストラテジーで製造されたもみ殻由来バイオ炭を用いて,農地での大規模な混合試験を計画している.農地試験をつうじて,一般的な植物栽培環境下でバイオ炭が植物育成に及ぼす影響や土壌に関する評価を行い,本ブラックジャック ストラテジーの有効性を明らかにし,小規模適用から社会実装を進めていく.もみ殻だけでなく,さらにほかの未利用農業残渣や木質バイオマスにも本ブラックジャック ストラテジーを適用し,用途拡大を図れるようブラックジャック ストラテジー開発を加速する.
現在の試作機では,バイオ炭製造時の熱回収は行っていないが,ボイラなどの熱回収による給湯,暖房利用や吸収式冷凍ブラックジャック ストラテジーの組み合わせによる冷房利用,さらには規模に応じた発電利用など熱利用の可能性についても検討を進めてまいりたい.
第64巻 第1号 特集 未来へのクロスロードに立つブラックジャック ストラテジー開発
:ブラックジャック ストラテジーからAI 活用まで