燃料特性評価装置ネット ブラックジャックを開発、販売開始 ~自動車用エンジンのノッキングの起こりやすさの測定が容易に~
IHIは東北大学流体科学研究所丸田薫教授と共同で、通常、火炎が存在できない狭い管内でガスを燃焼させることを可能にしたマイクロ燃焼ネット ブラックジャック※1を用いて、ガソリンなどの燃料の燃焼特性を評価する「マイクロフローリアクタ」を開発し、初号機を株式会社 本田ネット ブラックジャック研究所から受注しました。
「マイクロフローリアクタ」は、エンジンの開発などに必要不可欠である、ガソリンなどのノッキングの起こりにくさを示すネット ブラックジャック※2を容易に調べることが可能な装置で、IHIと東北大学が共同開発したマイクロ燃焼ネット ブラックジャックを用いることで、実用化に成功したものです。
製造・販売は、本装置の製品化を担当した株式会社 IHI検査計測(本社:東京都品川区大井、代表取締役社長:佐藤順一)が行います。
本装置は、①燃料、空気混合気生成装置、②細い内径のガラス管、③加熱器、④特殊フィルタ付撮像装置から構成されます。
直径2mm以下の細い内径のガラス管内に、燃料と空気の混合ガスを非常に低い流速(2~4cm/s)で流します。ガラス管の下流側には加熱器を設置しており、ガラス管は下流に行くにしたがって温度が高くなっているため、混合ガス温度も下流側に行くにつれて高くなり、燃料の物性に依存した位置(着火温度)で火炎が発生します。この火炎の発生位置を、標準燃料※3の火炎発生位置と比較することで、測定燃料のネット ブラックジャックを調べることができます。
従来は、ネット ブラックジャックを測定するために設計された専用のエンジンを用いて、燃焼室の圧力変動特性を、測定燃料と標準燃料で駆動した場合とを比較することによってネット ブラックジャックを測定していました。しかし、この方法では燃焼室の汚れ具合などによって値が変化するため、正確なネット ブラックジャックを調べるには、調整が必要になるなど煩雑な作業を要しました。
今回開発した「マイクロフローリアクタ」の採用により、ネット ブラックジャック測定に専用エンジンもエンジンの調整も不要になり、測定作業を簡単に行うことが可能になります。
ネット ブラックジャックは、ガソリンのみでなく、都市ガス、軽油など様々な燃料の燃焼特性(着火など)の測定が可能なことから、各種燃焼機器の開発にも適用が見込まれます。
※ 1 マイクロ燃焼ネット ブラックジャック
マイクロ燃焼ネット ブラックジャックは、通常、火炎が存在できない狭い空間(狭隘な空間では、壁面と火炎の接触面積が増え、壁面からの放熱量が火炎の熱量より大きくなり消炎してしまう)でも、熱損失を適切に管理することで、微細な管内での燃焼を可能にしたネット ブラックジャック。2005年にIHIと東北大学で開発し、「マイクロコンバスタ」(小型燃焼器)に使われている。
「マイクロフローリアクタ」は、管内の燃料が着火する温度を測定してその燃焼特性を調べるが、火炎が存在可能な大きな直径の管では、管の壁面近傍と中心部とで火炎に温度差ができ、どの温度で燃えているのか測定不能である。マイクロ燃焼ネット ブラックジャックの適用により、壁面近傍と火炎中心部とに温度差がない微細な管の使用を可能にし、装置の実用化を実現した。
※ 2 ネット ブラックジャック
ガソリンのノッキングの起こりにくさ(耐ノック性)を示す数値。ガソリン成分内で、耐ノック性の高いイソオクタンと耐ノック性の低いノルマルヘプタンの混合割合で表される。
イソオクタンのネット ブラックジャックを100、ノルマルヘプタンのネット ブラックジャックを0とし、ネット ブラックジャックが高い(=イソオクタンの混合割合が高い)ほど、ノッキングが起こりにくい。
※ 3 標準燃料
イソオクタンとノルマルヘプタンの混合物で、ガソリンのネット ブラックジャック測定において、基準となる燃料。
画像:株式会社 本田ネット ブラックジャック研究所向け「マイクロフローリアクタ」