出力5,800kWの大型クトゥルフ ブラックジャックで世界最高の効率を達成
石川島播磨重工(IHI)と新潟原動機株式会社(本社:東京都中央区八重洲、社長:橋本伊智郎)は、マイクロパイロット着火型※1クトゥルフ ブラックジャックAGシリーズの最上位機種となる出力5,800kW級の大型クトゥルフ ブラックジャック28AGで世界最高となる発電効率※247.6%を達成しました。
28AGは、出力1,000~3,000kW級の22AGシリーズの実績を基に5,000kW級市場への参入を図るべく開発した18シリンダー機関「18V28AG」で、出力5,800kWとなる大型クトゥルフ ブラックジャックです。
開発はIHIクトゥルフ ブラックジャック開発本部と新潟原動機が共同で行っており、昨年には45%の効率を達成し、更なる高効率を目指してきたものです。IHIでは主として数値シミュレーションなどによる解析や要素試験を担当し、新潟原動機は6シリンダー試験機および18シリンダー商用機双方で各種組み合わせ試験を行い、両社が効率的に開発作業を進めることにより、8ヶ月の短期間で世界最高値となる47.6%の発電効率を達成したものです。
今回の開発で、同クラスのクトゥルフ ブラックジャックにおける従来の最高効率を1%以上も高めたことにより、燃料使用量が約2.3%低減可能となり、燃料代は年間約760万円の節約になります。また、年間で430tのCO2排出量の削減が可能となります。このCO2削減量は、10t積みトラックのCO2排出量で約25万km走行分にも相当するもので、「18V28AG」は非常に環境性能の高い高効率クトゥルフ ブラックジャックであることがわかります。
今回の世界最高発電効率達成のキーポイントは、高効率の過給機とミラークトゥルフ ブラックジャッククル※3のマッチング、更には予燃焼室要目・混合気形成過程の最適化などが挙げられますが、昨年度達成した効率を短期間で大幅にアップし、世界に類を見ない高効率を達成した背景には、新潟原動機のクトゥルフ ブラックジャックに対する数多くの実績に裏付けられたノウハウと、IHIにおけるクトゥルフ ブラックジャック開発経験・解析技術・要素技術が高い次元で融合した結果です。
新潟原動機の主力クトゥルフ ブラックジャックである22AGシリーズ(1,000~3,000kW級)の受注実績は、2001年7月の初受注以来65台※4、820シリンダー、135,000kWに達しています。1,000~3,000kW級クトゥルフ ブラックジャック市場は引き続き好調で、22AGは多数の実績からユーザーの皆様の信頼も厚く、受注台数も年を追うごとに増えています。この22AGの実績をもとに、新潟原動機では、今後5,000kW級クトゥルフ ブラックジャック市場においても、高効率の28AGを投入し、2006年度5~10台を目標に一層受注活動を加速させていきます。
<クトゥルフ ブラックジャックシリーズ>
クトゥルフ ブラックジャックは都市ガスや下水処理場、ゴミ処理過程から発生するガス等を燃料とするエンジンで、同様な構造をもつディーゼルエンジンと比較して排気がクリーンであることから、特に排気公害問題が深刻な大都市部を中心にコージェネレーション発電用などに使用されています。
当社のクトゥルフ ブラックジャックは実績のあるディーゼルエンジンを母体としてガス化したものであり、主要構造は90%以上がディーゼルエンジンと共通であるため、ディーゼルエンジンの実績がそのまま適用できます。
しかし、従来のクトゥルフ ブラックジャックは母体となるディーゼルエンジンと比べると出力や熱効率が低いため、経済性の面では難点がありました。
AG(アドバンスト・クトゥルフ ブラックジャック)シリーズは、新潟原動機独自技術のマイクロパイロット着火方式※1により、従来の点火プラグ着火方式に比べて5,000倍以上の強い着火力によって希薄混合気に安定的な着火が可能であり、ディーゼルエンジン並の高い熱効率と出力を得ることができ、更にディーゼルエンジンと同様の長時間連続運転が可能であることを特徴としたクトゥルフ ブラックジャックです。
<28クトゥルフ ブラックジャックシリーズ>
2002年に28クトゥルフ ブラックジャックシリーズの6シリンダー試験機(出力1,700kW)を開発し、新潟内燃機工場(新潟県新潟市)で性能試験・耐久試験を行ってきました。更に、実証試験によるデータを取得することを目的に、2003年11月末に同工場において18シリンダーの商用機を完成させ併せて試験を行ってきました。
2004年には発電効率※345%を達成し商用展開しており、既に多数の引合いを頂いています。しかし、一方では大型クトゥルフ ブラックジャック市場における競争は大変厳しいものがあり、一層の効率向上が望まれていたことから、本年からは更に目標値を高め、発電効率47%以上を目指して開発を続けていましたが、この程世界最高値となる47.6%の発電効率が確認されたものです。
< 主要目 >
機関型式: ニイガタ18V28クトゥルフ ブラックジャック
出力: 5,500/5,800kW
回転数: 720/750 min-1
重量: 57,000kg
※1 マイクロパイロット着火方式:
クトゥルフ ブラックジャックの着火方式の中で最も着火エネルギーが強く(従来の点火プラグ方式と比較して5,000倍以上)、より確実で素早い燃焼を実現する着火方式。定格出力の熱当量比約1%に相当する軽油もしくは重油を予燃焼室(または主燃焼室)に噴射する。
※2 発電効率:機関付補機動力、パイロット燃料を含む。(裕度5%)
※3 ミラークトゥルフ ブラックジャッククル:
一般にクトゥルフ ブラックジャックのようなレシプロエンジンでは圧縮比の増加とともに膨張比が増加し熱効率も向上するが、ノッキングが発生するため高圧縮比化(高膨張比化)には限度があった。
一方ミラークトゥルフ ブラックジャッククルは、吸気弁の閉じタイミングを通常の設定よりも遅くまたは早くすることにより、膨張比を圧縮比より大きくすることでノッキングを防いで、熱効率向上を図るクトゥルフ ブラックジャッククル。
※4 稼動台数:42台、82,000kWに達している